12.ある強みストーリー②
その人はうまれつき、豊かな情緒を持っていたと聞いている。成人期になって
からは、お酒を飲むと感極まり、お世話になった方や家族の気持ちを慮り、ひ
と目も気にせず号泣することが常だったしい。
更に年をとり、その人は、テキパキと人に指示をおくり、仕切るのが得意だと
いう特性が出てきた。
何をやっても、目立ち、彼が中心になった。そして、30歳を過ぎてから、独立
した。
独立したあとは、社員を良く守り、良く話を聞き(時々聞かないで暴走し)、
何かあれば、飛び込むように現場に行き、話をまとめた。
ライバル企業ができれば、そこに負けないようにした。ライバルができればで
きるほど、顔つきが明るくなり、楽しそうになった。
そのうち業界で、押しも押される地位を得た。彼は、50歳になるころには、業
界の第一人者として、知らぬものもいない存在になった。
60歳になる頃に、事実上、最前線を降り、後進に道を譲った。
部下の心を掴むのがうまい反面、気を使いすぎて、てきぱきとした指示を下せ
なくなっていた。
また、ライバルを駆逐した結果、ライバルという存在が少なくなり、そこでも
燃えるものがなくなっていた。
しばらくの間の停滞のあと、彼は決断した。今後は、後進を育てる諸先輩をラ
イバルとして、彼らに勝てるように力をつくそう、と思った。
今後は、いかに後進を育てたかを、自分の達成する目標だと思った。
今、彼の周りには、親戚を含め、集まる人が多い。引退した今、飲み会を家で
開くこともある。その際には、過剰に仕切らないように、指示しないように、
気をつけている。酔っているときは尚更だ。
おかげで、飲み会はいつも盛況で、楽しい時間を過ごしているそうだ。
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